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3 自然科学系の大学院生が何かに興味を持って調べ出すきっかけは、「先ずは人間」だと言ってよいでしょう。一般には、指導教員や大学院の先輩達とお話をしていて、書籍や学術論文を紹介してもらう過程で、興味の対象と出会うことが多いのではないでしょうか。できれば、研究課題の押しつけではなく、主体的に取捨選択して研究課題を見つける良い出会いが望ましいと思います。 大学院生が、研究テーマが決まり、専門書または学術論文の手がかりを得ていると仮定しましょう。インターネットの時代だからと言って、むやみやたらにGoogleなどの検索サイトにキーワードを打ち込んでみてもあまり効果は得られないものです。自然科学系の大学院において成果と呼ばれるものは何でしょうか。それは、査読論文です。それでは、論文審査員はどのような基準で掲載可否を判断するのでしょうか。分野ごとに若干の違いはあるにせよ、    ① 新しい  ② 正しい  ③ 面白いの3項目を満たしていなければ、査読論文として受理をしてはもらえません。大学院生は、先行研究・研究背景を掌握し、自ら設定した研究目的が「新しい」ものであるかを確認する作業の中で、必要な学術情報を調査・収集する力を要求されます。また、研究目的を達成するための研究方法を構築するに必要な学術情報の収集は求められます。 既に大学院生は手がかりを持っていると仮定していますので、研究対象のキーワード、先行研究者名などを「文献データベース」に打ち込んで関連論文を見つけ出しましょう。下の例は、数学のデータベースzbMATHです。ここでは、1868年から現在までの数学文献がすべてカバーされていて、3,500のジャーナル、1,100のブックシリーズ、およそ17万点の書籍から抽出した300万件超のデータを収載されています。「文献データベース」には、その論文本体(pdf le)にたどり着く情報が蓄えられています。学術雑誌社から論文が無料で配布されている場合には、このデータベースのリンクから直接たどり着くことができます。 しかしながら、一般には必ずしもうまくはいきません。それでもあきらめるわけにはいきませんね。そのような場合にどうすれば良いかを経験値をもとに書いておきましょう。 方法1:文献データベースで得られた論文タイトル著者名をGoogleなどの検索サイトに張り込むことで、多くの魚を投網に掛けるように関連HPを見つけることができます。ただし、この後これらのwebサイトの中から求める論文を探し出すことが意外と大変です。 方法2:研究が目的であれば、学術雑誌を閲覧することのできるサイトがあります。数学の論文を紹介してくれるProject Euclid(http://http://projecteuclid.org/)です。残念ながら、全ての学術雑誌が可能ではありません。 方法3:大学などの図書館を利用する。放送大学の院生であれば、附属図書館の電子ブック・電子ジャーナルのWebページで見つけることができるかもしれません。放送大学と契約のない学術雑誌などについては、実際に契約のある大学の図書館で閲覧の許可をもらう必要があります。この場合は、自宅でというわけにはいきませんし、送ってもらうとなれば費用と手間が発生します。 方法4:実物は諦める。学術雑誌掲載前のversionが、プレプリントサーバーに置いてある場合があります。数学では、arXiv(http://arxiv.org/)が有名です。また、著者個人のHPに掲載論文versionとは異なる形式で、研究成果報告が紹介されていることもあります。 方法5:もし、経済的に余裕があるのであれば、「文献データベース」にリンクされている学術雑誌社から(有料)購入することが一つの方法ではあります。 最後に、インターネットの利用ではありませんが、書籍に学術論文の書き方を紹介したものもあります。例えば、木下是雄著、「理科系の作文技術」、中公新書624(1981年初版)などは長い間、理系学生の論文作成の教科書だったと記憶しています。余談になりますが、「最後も人間」だと思います。自分で調べて「新しい」と思ったことは、その分野の専門家なら「誰でも知っていること」であることがあります。セミナーなどの機会に指導教員や先輩達に意見をもらうことのできるコミュニケーション能力を培うことが、実は最も大切かもしれません。数理系学術情報の検索方法についてー人間とwebとのコミュニケーションー石崎 克也大学院(文化科学研究科)自然環境科学プログラム教授columnzbMATH(http://zbmath.org/)10

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