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column「先行研究が無い」ということ高橋 秀明大学院(文化科学研究科)情報学プログラム准教授資料入手方法2資料入手方法27 研究には、オリジナリティー(独創性)が必要であると言われます。どんな小さな問題であっても、世界で初めてその問題に対してアプローチして、何らかの解決を導くことが、研究の醍醐味であるとも言われます。このことは、研究をする本人にとって大切なことですが、その研究を評価する人(指導教員や学会誌の査読者ばかりでなく、研究をする本人のまわりにいるすべての人)にとっても、大切なことです。 通常は、先行研究を調べてから、当該の研究領域の現状を把握して、自分自身の研究の目的を決めていきます。つまり、先行研究に何らかの問題を見つけて、その問題を解決することを、自分の研究の目的とすることになります。 ここまで、すんなりと読むことができましたか? 実は、大いなる矛盾があると思うのですが、いかがでしょう? 先行研究を調べる、と書きましたが、それほど単純なことでしょうか? 研究の文脈が決まっており先行研究の蓄積があるような研究領域であれば、文字通り先行研究を調べることによって、まだ行われていない研究目的を設定することは比較的容易であると思います。しかし、これでは、研究のオリジナリティはあまり高くなく、組織的な追試のレベルに留まると評価される可能性が高いと思います。もちろん、追試自体には、科学という営みにおいて大いに意味がありますが。 一方で、研究の文脈がはっきりしなくて、先行研究の蓄積がほとんどないような研究領域もあることは事実です。しかし、そもそもそのような研究を行うためには、周囲(特に指導教員や研究室の仲間達)の理解を得ることが難しくなることも多いと思います。 放送大学の卒業論文や修士論文の研究指導に関わってきて数年経ちましたが、「先行研究が無い」という学生の皆さんに出会うことが多いなあという印象を持っています。学生の皆さんが先行研究を調べていないとか、先行研究を調べる方法を知らない、ということもあります。教員の立場としても、自分の研究領域を外れてしまうと、先行研究の最新の状況を抑えていない、ということも往々にして起こります。科学の細分化、ということです。 一方で、学生の皆さんが持っている問題意識が、従来の科学や学問の枠組みを超えてしまう、あるいはその枠組みを壊してしまう、ということもあると思っています。2014年度から放送大学に博士(後期)課程が設置されましたが、その設置準備のための学内委員会に参加していた時にも、同じようなことを感じておりました。 研究指導にあたっては、学生の皆さんの「問題意識」をできるだけ広く深い視点から見渡して、ご自身の研究として具体化できるように接していきたいと思っています。このことは、私自身の問題意識や教育・研究活動を見直す際にも、同じだなと思っております。33

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